幼いころからの難聴で、「きこえる・はなせる」前提で展開する物語を受け容れられずにいたひと。
双極性障害や脳梗塞で、それまで当たり前にしていた「読む」ことが、ままならなくなったひと。
難病をわずらう家族の介護により、一人の時間や、気ままな生活を持てなくなったひと、、、。
彼らはそれでもいつしか、傍らに本をたずさえるようになっていきます。
これは、そんなお守りのような本とのエピソードを綴ったエッセイ集です。
病や障害とともに生きる、12人のひとびと。
彼らの姿は、「患者」「障害者」「介護者」といった大きな肩書きでは語りつくせません。
12人の著者が綴った、自分自身へのもどかしさや、社会に感じる悔しさは、むしろ、わたしたちの誰もにとって身近な感情なのでは。読みながら何度もはっとさせられます。
ささやかでも自分の性質に悩んだことがあるひと、日々の中に「生きにくさ」を感じるひとに、きっと何か、気づきを与えてくれる一冊です。