この世界は人によって違う。あなたにとっての赤が僕にとっての赤ではないように、あなたにとってのこの世界は僕にとっての世界とは違う(正確には違うという断定もできない)。世界とはそれほどに不定形だ。不明確だ。無限に多面的であり、多層的でもある。
あなたと僕にとってひとつだけ確かなこと。それは同時代に生きているということだ。
(「クオリアを考える 茂木健一郎さんと」より)
映画監督でドキュメンタリー作家の森達也と、多方面で活躍する著名人が対談したラジオ番組「森の朝ごはん」(2005.10-2007.9)の様子を文章にまとめた一冊。
「政治」や「マスメディア」という大きな話題もありますが、「街」のこと、「食」のことなど、今目の前のささやかな問題から、社会への関心を掻き立ててくれます。
対談のお相手は、茂木健一郎、曾我部恵一、是枝裕和、蜷川実花、糸井重里ほか20名の、豪華すぎる面々。
もちろんここには、語り手たちの思想や意見が色濃く映し出されています。けれど、彼らがほんとうに伝えたいことは、意見を持っているということ。社会のなかで、ひとりの自分として生きる、ということの深みなのかもしれません。