「突然ですが、僕のお父さんは東電の社員です」。
ある日、そんな言葉から始まる手紙が、小学六年生の「ゆうだい君」から、毎日小学生新聞に届きました。
きっかけは、東京電力福島第一原子力発電所の事故後、毎日小学生新聞に掲載された「東電は人々のことを考えているか」という、ジャーナリストのコラム。
手紙には、それに対するゆうだい君の意見と、"みんなで話しあいたい"という気持ちが書かれていたのです。
本書には、ゆうだい君の手紙をきっかけに、毎日新聞社が読者に募った手紙への返事と、それを踏まえた森達也の思いがまとめられています。
返事を書いたのは、小中学生を中心に、さまざまな年齢の人々。ひとりひとりの言葉に、ときにはっとし、ときに戸惑いながら、自分の声が、心の内から聞こえてくるのを感じます。
意見をもつ、ということ、考え続けるということ。当たり前にするべき営みから遠のきつつある私たちを、この本は、力強く揺り動かします。