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41歳で乳がんと診断されたアン・ボイヤー。
彼女を待っていたのは、病の症状や死への恐怖だけではありません。
患者にとってあまりに過酷な医療システム。目的を失っているかのような、大企業によるピンクリボン運動のキャンペーン。ネット上にあふれすぎた情報…。
それらに悲痛を感じ、怒りを抱く彼女の問いそのものが綴られた一冊です。
「自分自身についてしか書かないことは、死について書くことかもしれない。けれど死について書くことは、すべての人を書くことなのだ」(プロローグより)
印象ぶかいフレーズはたくさんありましたが、読まれる前のみなさんに届けたい一節です。
この言葉の通り、どこまでも「私の乳がん」が描かれている。
だからこそ、この本は病気であるかないかとか、女であるかどうか、ということに帰結しない。
そこが、この本の力強い魅力です。
私自身読みながら感じていたのは、まぎれもなく混乱でした。
ときに気が動転し、ときに本を閉じ…。
しかし読み終えたとき、その混乱は、ひとりの人として、自分の生をたしかに生きたいがための混乱だ、と感じました。
本来固有のものであるはずの、ひとりひとりにとっての「私」を、世界から取り返すぞとあらがうボイヤーの声は、読み終えてもなお頭の中に響きわたっています。
ぜひ、まずはおそるおそるでも、表紙を開いて、ボイヤーの言葉に出会いに行ってみてくださいね。