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河合隼雄/著
岩波書店
日焼けあり
大人が「悪」と見なしていることを敢てするのは、大人に対する一種の宣戦布告のようなものである。「大人の言うとおりに生きているのではないぞ」という表現である。大人になって自分の子ども時代を振り返ってみると、自立の契機として何らかの意味での「悪」が関連していたことに気づく人は多いのではなかろうか。これはもちろん危険なことである、下手をすると、まったくの悪の道への転落につながるだろう。しかし、危険のない意味あることなど、めったにないと言うべきだろう。
(本文より)
心理療法家である著者が、「子どもの教育に熱心なのはいいが、何とかして「よい子」をつくろうとし、そのためには「悪の排除」をすればよいと単純に考える誤りを犯している」のではと問いかけながら、実際にインタビューやカウンセリングを行った事例を取り上げながら、「悪」の持つ多彩な側面を語ります。
子育てや教育にかかわるときだけでなく、自己や他者の来た道をふり向き見つめるときにも気づきもたらしてくれますよ。