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森絵都/作
カバー折れあり
自力でのぼった屋根にひざをかかえてすわるとき、すーっと息を吸いこみながらあおぎ見るその空を、星ぼしを、雲のかけらを、まるごと自分たちのものにしたような気分になれるのだ。
星はわたしたちのために輝いている。
雲はわたしたちにむかって流れてくる。
風はわたしたちのために空をめぐる。
ふだんはぜんぜん思うようにいかない、もしかしたらわたしたちを無視しているかもしれないこの世界だって、いまだけはわたしたちを中心に回っている。
そんな気分に。
(本文より)
中学二年生の陽子と、ひとつ年下の弟・リン。共働きの両親の下で育った姉弟は、「自分たちの力でおもしろいことを考えつづけ」てきた。彼らはある夜、屋根の上を気持ちよさそうに歩く猫を見て、思いついてしまった。自分たちも屋根にのぼってみたら、と…!
森絵都の代表作の一つであり、何歳で読んでもやっぱりみずみずしく心に届いてしまう、美しい物語です。