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【収録作品】
「サンのこと」黒田征太郎
「女神の顔」池澤夏樹
「本の厚み」川野太郎
「夜に」渡辺京二
「年プ」石牟礼道子
「朝」石牟礼道子
「若くて苦い言葉たち」ゆうた
「麻雀放浪記 あるいは夢の実現」吉本由美
「鶯」磯あけみ
「飛行機雲の向こうに」浪床敬子
「言葉と言葉の間」田尻久子
「砂鉄と久子の日曜放談」武田砂鉄×田尻久子
「震える」坂口恭平
表紙画:黒田征太郎
毎号たのしみにしてくださっている方もいれば、パッと目に入った表紙に惹かれてという方も多い「アルテリ」。
夏に出た18号も新しい店舗で並んでいます。
言葉の力に唸らされ、生命に思いをはせ、しなやかな反骨にはげまされ…としているうちにあっという間に読んでしまいます。
どの作品も相変わらず素晴らしいのですが、石牟礼道子さんの
「この世のありとあらゆる苦痛こそが自分を支えるバランスであるようにおもう」
との言葉が、個人的には心に刺さりすぎてしまいました。
また、40ページ近くにわたって掲載されている「砂鉄と久子の日曜放談」もおすすめ。
「本熊本」というブックイベントの一環として行われた、フリーライターの武田砂鉄さんと橙書店店主の田尻久子さんによる対談の記録です。
よのなかに少しでも「なんかいやな感じ」を憶えるという人は、ラジオを聞いているような感覚で、きっとするする読んでしまうことと思います。
この混沌とした、どう希望を持ったらいいのかわからない時代、でもやっぱり希望はどこかにあると信じたい時代に、「アルテリ」は灯台のように明かりを放ってくれているような文芸誌だと、しみじみ感じた今回でした。
…と書いているときりがないので、ぜひ気になる方は店頭、オンラインショップでお手に取ってくだされば幸いです!!
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熊本の文芸誌「アルテリ」は、2022年12月に亡くなった思想史家・渡辺京二さんの呼びかけにより創刊。
田尻久子さんの営む橙書店が中心となり、現在も編集・出版をつづけています。
「アルテリ」には、ロシア語で「職人の自主的な共同組織」という意味があり、「ものを書くことでしか生きられない人たちをつなぎ、居場所をつくってやりたい」という渡辺さんの思いとともに始まりました。
これまでに関わってきた作家は、石牟礼道子、伊藤比呂美、坂口恭平ほか多数。池澤夏樹や谷川俊太郎、町田康らも寄稿するなど、多彩な書き手に引きこまれます。