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「部屋はしんと静まり返り、家じゅう何の動きも感じられない。周りの何ひとつ、たったいま逃げてきた部屋で何が起きているのかーー暗く、音もなく、何かが起きているーー手がかりを与えてはくれなかった。目を覆っているおかげで、忘却と確信が訪れた気がしたが、それも一瞬でしかなかった。やがて瞼がふたたび開くと、恐ろしい光景が現れた」
(「夜の勝利」より)
20世紀前半に活躍したアメリカの作家、イーディス・ウォートンの短編集。
数行読むだけでぞっと背筋の寒くなるような作品ばかりなのですが、こういうタイプの本は、当店としてはめずらしいかもしれません。
(店主は個人的にホラーが超苦手ですが、必要以上の「怖がらせ」のようなものがないのでただただたのしく読めました)
とはいえ、こちらは「ホラー」と括ってしまうにはあまりに惜しい怪談集です。
「奇妙さ」や「怖さ」という掴みきれない感覚の、さらに奥にあるものが描かれているとも言えそうな。
ふと立ち止まりたくなるようなところが、この本の魅力のひとつだと感じます。
好奇心をぐわぐわと揺さぶる作品ですので、あれこれ考えずにまずはたのしんでいただけたらと。
きっと、読み終えたらすぐにもう一度読み返したくなるはずですよ!
東京・大田区にある葉々社という新刊書店さんから、新たに発売を開始された「小さな海外文学」。
数日前に紹介した『ロングパドル人間模様』も同じシリーズです。
おもに「海外文学に触れてこなかった読書家たち」を対象に、気軽に読みやすい作品をと考えられた、量にして120ページほどの本。
薄めの文庫本くらいの軽やかさで手に取ることができますよ。
柴田元幸/訳
吉田秀美(mewglass)/装丁
※今なら訳者・柴田元幸さんのサイン入りです!