


「生活とは自動でコンティニューボタンを押され続けてしまう残酷なゲームだ。どんなにおしまいと思っても、一度はじめたら離脱できない」。(「おしまい」より)
「今日も何かをこぼしたり落としたりする未来の種をせっせと撒いている」と綴られたひとつめの文章「パソコン」からもうすでに、著者のキャラクターに惹きつけられてしまいます。
さらに、「奴らが予想外の動きをしてくるから」料理が苦手、
「取り急ぎ」という言葉は「罪悪感という巨大な敵と戦うための心強い鎧だ」など、
目のつけどころがなんともユニーク。
ちょっと怠惰な生活者としての視点は、丁寧であること、オシャレに魅せることが評価されやすい今の時代に、
思いがけず肩の力を抜いてくれます。
土人形作家であり歌人の著者による、全80編の短いエッセイ。文章と文章の間に並ぶ短歌をぱらぱらと読むだけでもたのしいですよ。
実はこちらの本、当店のお客さんからのリクエストや感想をきっかけに、店に並べるようになりました。
じわじわとくせになる、寺井さんの「笑い」の世界。
「取り急ぎ」今を生きることに必死な私たちのための、特効薬であり常備薬のような一冊です。